洞斎山人日乗

ゆうがた、空の下で、身一点に感じられれば、万事に於いて文句はないのだ。

保命酒

 約束事があり、家内と福山に行く。話の流れで鞆の浦に足を伸ばす。

 ここは、奈良時代には既に良港として知られた場所で、江戸時代までは海運・商業の要衝として栄えた町だ。
 ただ、昔の小型船にとっては良港でも、明治以降大型化の一途をたどった輸送用船舶を入れるには不向きだったようだ。また、港の背後の平地も狭いから、倉庫を置くのも困難でだったからだろう、大量化した物流を背景に輸送路の中枢を離れてしまい、今は江戸の風情を残す観光地として知られるばかりだ。
 海潮寺なるお寺さんから、対岸の仙酔島を眺めるのは、大変愉快。仙酔島の、伸びやかな姿が良い。主峰のけれん味の無い三角形が印象に残る。小山と瀬戸に浮かぶ小島と、小島の朱いあずまやが変化を生んで、趣を添えている。 

 鞆の名産品が、江戸時代からの名残の、保命酒。米焼酎に漢方の薬を16種類漬け込んで作るお酒で、一種の薬用酒・健康食品と言える。養命酒の原型というか、本家本元というか、ルーツはここにあると聞いたことがある(養命酒の方が漬け込む薬味の種類が少ないらしい)。

 琥珀色のとろりとしたお酒で、味も独特の甘みがあって、濃厚。割って飲むのが、一般的だという(店頭では、少量を氷で割って奨めていた)。寝る前にちびちびと楽しむと、体が温まり、よく寝られそうだ。

 自分達用とそれぞれの実家用と、計3本の保命酒を買い込んで、帰宅。

 いい一日でした!